EUデジタル市場法がAppleに要求：iOSのエンジン自由化によるWebGPUへの影響とは？

EUデジタル市場法（DMA）はEUによって制定される法律でデジタルサービスを提供する大手IT企業を念頭にした規制です。デジタル市場における競争を公正かつ開かれたものに保つことを目的としています。DMAはAppleに対してiOS上でWebkit以外の代替ブラウザエンジンの使用許可を要求しました。これによりAppleはiOS、Safari、そしてApp Storeにおける利用要件や規制についてのポリシーを変更せざるを得なくなりました。

DMAの決定に対してAppleはiOS 17.4以降、EU圏のユーザーがSafari以外のブラウザをデフォルトに設定することができると発表しました。さらに、これまではiOS上で動作するWebブラウザは全てAppleが開発したWebkitをエンジンとして使用する必要がありましたが、それ以外のエンジンの使用を認めました。

iOSによるWebGPUのサポート

Webの最先端テクノロジーであるWebGPUはここ数年で大きな進歩を遂げてきました。2023年にはデスクトップユーザー向けのChromeとEdgeがWebGPUにサポートし、Web上のグラフィックスとコンピューティング機能を大幅に向上させることでWebの新しい時代の幕開けとなっています。

つい最近では、2024年の1月17日にGoogleがWebGPUに対応したAndroid版のChrome 121. をリリースしています。それに続くようにFirefoxもWebGPUヘ対応する意向を示しており、WebGPUの注目度の高さが伺えます。

これにより、半数以上のWebユーザーが新しいWeb技術であるWebGPUを利用することができます。

一方、ChromeとともにWeb市場の大部分を担うAppleのブラウザSafariはいまだにWebGPUへの対応を発表していません。過去の動向から考えても、Appleは新しいテクノロジーの導入に遅れがちであり、現時点でWebGPUに対応したブラウザの実装には至っていないのが現状です。

iOSではChromeやFirefoxなどのブラウザをインストールすることができますが、そのエンジンにはAppleが開発したWebkitエンジンの利用が義務付けられているので、実質WebGPUを使用するのは不可能となります。

そこで、DMAはAppleに対してiOS上でChromeなどの別のエンジンを使用することを許可するよう要求しました。

これにより、ChromeやFirefox、EdgeなどのブラウザエンジンがiOS上で使用でき、iOSのWebGPUへのサポートが早まる可能性が高くなります。

しかしながら、今回のDMAの決定はEU圏内のユーザーにのみ適応されます。

他の地域のユーザーはAppleがWebGPUに対応したiOSの実装を行うまで待つ必要があると考えられます。とはいえ、今回の決定は一部のIT企業のWeb市場の独占を防ぎ、ブラウザの多様性と技術促進に向けて重要なものとなるでしょう。

DMAの規制はテクノロジーの発展やiOSユーザーにとって重要な決定となりました。

これまではある意味閉ざされていたiOSブラウザのエコシステムをオープンにすることで、Appleは新しい時代の規制に対応することになり、WebGPUが作り出す高度なWeb市場が開かれるものになるのです。

Web業界がより、自由で公平な競争市場になり、長期的に世界中のユーザーに利益をもたらしてくれるでしょう。iOSが可能にするWebブラウザの将来がとても楽しみとなるニュースです。